(注記)

 

このページに掲載される各情報は、各ページ作成時に公表されている資料をもとにしています。

 

資料に関しては、すべての情報が利用可能な状況ではありません。

たとえば、東京電力並びに政府は、事故発生時から2011/03/12午前3時ごろまでのプラントに関するパラメーターをほとんど公開していません。 (2011/05/11現在)

もちろんこれには、技術的な理由もあるのですが、その他にも、誰にもわかっていない、見えていないこと等もまだまだたくさんあります。

 

2011/05/16 東京電力は訂正版のパラメーターを公開、さらに膨大なプラントデーターを公開しました。

 

 

また、作成者の知識並びに調査能力、理解力の限界があります。(この底は相当浅いものです。)

 

したがって、事故の要因、程度等については、未確定です。

正確な事故の要因、事故の拡大進行の過程、程度や影響等の確定には、法的な権限を持った正式な組織(事故調査員会等)の調査や捜査を待たなければなりませんし、相当の時間がかかるものと思います。

 

事故調査委員会には、事故の技術的な側面だけでなく、事故対応における、総理および政府並びに関与した政治家、専門家、各関連機関の果たした役割(プラス、マイナス両面)についても調査検証をしていただきたいと思います。

 

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Personal Interests Research and Data Storage

2011/07/15

 

 

 

2011/06/26 作成開始

7/15 補足情報追加 

 

地震発生後の、1,2,3号機の炉心並びに、プラントの状態について

東京電力と原子力安全・保安院は、それぞれ異なったモデル(解析コード)を用いて、解析を行っています。

 

解析とはシミュレーションです。

(シミュレーションについては、シミュレーションの話 (si)を、ご覧ください。)

 

 

***補足***

 

以下の事故解析コードは、地震や津波の影響を直接評価するものではありません。

誤解されている方がいるようです。

 

地震や津波が、プラントに与える影響は

実測値からのダメージを評価するか、

別のシミュレーション等により評価して、

(たとえば、プラントの破損状況や、設備の能力喪失などが発生するorしないなど・・・)

それらを前提条件として、以下のコードに入力し、

炉心や、RPV,、格納容器などの挙動を見ていくものです。

 

勘違いなされませんように。

 

 

 

炉心を含むプラントがどのような過渡変化(事故シナリオ)を経過して、どのような状態になったのか(Y)を推定する解析のためには、大きく分けて2つの物が必要です。

 

一つはモデル(解析コード)で、

東京電力

MAAP 

(Modular Accident Analysis Program)

 

Fauske & Associates, LLC の製品です。

http://www.fauske.com/index.html

Fauske & Associates, LLCは、

Westinghouse Electric Companyのsubsidiariesのひとつです。

http://www.westinghousenuclear.com/

"The new MAAP4 computer code (including the MAAP4-GRAAPH graphical interface) provides a flexible, efficient, integrated tool for evaluating the in-plant effects of a wide range of postulated accidents and for examining the impact of operator actions on accident progressions."

 

原子力安全・保安院

(独立行政法人原子力安全基盤機構「JNES」)

MELCOR

(Methods for Estimation of Leakages and Consequences of Releases)

 

Sandia National Laboratories が、

http://melcor.sandia.gov/

U.S. Nuclear Regulatory Commission (NRC)

http://www.nrc.gov/

のために開発したものです。

 

"MELCOR is a fully integrated, engineering-level computer code whose primary purpose is to model the progression of accidents in light water reactor nuclear power plants. A broad spectrum of severe accident phenomena in both boiling and pressurized water reactors is treated in MELCOR in a unified framework, Current uses of MELCOR include estimation of fission product source terms and their sensitivities and uncertainties in a variety of applications."

 

MELCORはマニュアルが公開されています。

その中で、過去の実際の事故とその解析などが載っています。

 

また、MOXとLEU燃料の過酷事故における反応の違いの解析も公表されていて興味深いです。

 

 

を、それぞれ使っています。

 

 

もう一つは、モデルに入力する情報・値(X)です。

 

これも大別すれば2つあり、

そのうちの一方は、炉心やプラントの基礎情報です。 

(比較的容易に入手、評価可能な、初期情報。 それでも崩壊熱の設定などで東電とJNESでは設定に違いがあったりします。)

 

もう一方は、地震発生後の後発的な事象に関する情報です。

どういった機器がどのタイミングで自動起動したり操作され、それらの結果(機器の健全性・操作の成功失敗など)の情報です。

(たとえば、1号機であればIC:非常用復水器が、どのように操作され動いたかなどです。)

 

これらにより、炉心やプラントがどのように変化していくのかを、モデルが推定していきます。

 

 

今回の解析にあたり、大きな問題となったのは入力する情報・値側の、後発的な情報です。

 

これらの情報は、機械的に記録されたもの、関係者が残していた記録と、記憶、現場を見ることで確認できるもの、プラントンのパラメータから推定できるものなどなのですが…

 

ご存知というか、簡単に想像が出来ると思いますが、

バックアップを含む電源の喪失、建屋の爆発、放射線など、これらの情報の記録や、回収、確認を妨げるものはたくさんあります。

 

また、今回の事故の状況下で、それらの情報の確からしさを確認することは非常に困難を伴います。

 

例えば、ある操作をしたら、それに応じたプラントパラメータの変化が記録として残り、その記録が信頼できれば、操作が行われ成功したことが推定できますが、今回は、そのプラントパラメーター側も電源の喪失により、一時的に入手不能となったり、その後も仮設の電源で、計測機のラインから電圧を計測して換算したり、また入手したデータ類すら突変し、あり得ない指示値(計器が表示する値)や換算値を出したりしているので、評価を難しくしています。

各号機のプラントパラメータはこちらをご覧ください。

 

またプラント内の弁やラプチャーディスクなどは、まだ確認することが出来ていない場所がたくさんあります。

(画像をクリックすると大きくなります。)

kasetub110620_16.jpg (124798 バイト)

東京電力資料

 

東京電力は、

中央制御室などからのデータの回収作業を行い、2011/05/16に福島第一原子力発電所の1-6号機に関する膨大なプラントデータ、関連資料(ホワイトボードのコピーや写真など)を、保安院に報告し、公開しています。

 

公開された資料は、大別すると7種類です。

 

データー種類

内容

1

記録計チャート

発電所の各種データーを記録するために、広く使用されている記録紙。

ロール状の等の紙に、色インクによりプラントデータを記録する。

2

警報発生等記録等

プロセス計算機から出力されるデータの一種で、異常事象の発生時刻等の記録、プラントシステムの対応動作の記録等が示される。

基本的にプリントアウトされた紙による記録として残される。

3

運転日誌等

中央制御室に勤務する当直員により採集されたデーターや操作実績等を記録した運転日誌の他、交代勤務のため、次に勤務する当直員への引き継ぎ事項を記載した書類をいう。

4

プロセス計算機 運転データ

プロセス計算機には。上記データのほか、プラント挙動を示す数値データも収納されている。

5

過渡現象記録データ

過渡現象記録装置は、チャートを補完するものとして、異常事象の発生を契機に動作し、動作前数分と動作後30分間のプラント挙動を示すデーターを収録

6

各種操作実績とりまとめ

本店と発電所間のやり取りの情報、当直の日誌類から確認された操作についての取りまとめ。

7

プラントパラメーター

圧力 温度 CAMSなどのデータ (既に公開積み)

 

1,2,3号機のデータ回収状況

 

データー種類

1号機

2号機

3号機

1

記録計チャート

回収済:

地震発生から津波により停止するまで。+電源復旧後

2

警報発生等記録等

回収済:

印字出力されている記録については収録済

2号機 収録機能があり、データーも回収。

3

運転日誌等

回収済:

3/11の運転日誌を収録

引き継ぎ日誌(3/10夜勤-11日勤)を回収

ホワイトボードのコピーや写真など

4

プロセス計算機 運転データ

データなし

収録機能なし

回収済

データなし

収録機能なし

5

過渡現象記録データ

回収済:

ハードディスクの取り出しや仮設電源投入により回収

 

 

これらから得られた情報(不完全で、時に相矛盾する)をベースにし、さらに仮定を置いて、モデルの中で事故をおさらいしたのが解析です。

 

 

しかし、行われた解析の確からしさについても、評価が難しいものとなっています。

 

これは、すでに触れたプラントパラメータの不確かさに起因しています。

 

モデルが出した解析値(圧力、水位の経過等)が、実測値と合っていれば、モデルと仮定がおおむね正しいとか、モデルが示す結果が相当信頼できる、となるのですが・・・・

今回はこの実測値が怪しい(特に計器の指示値自体には疑わしい物がある)となると、傾向的に同じ動きをしているぐらいしか確からしさを確認するすべはなく、程度の乖離はどのように評価したらいいのか、かなり難しい(答えの出ない?)問題となります。

 

解析の結果は、これらの事を踏まえたうえで、見るべきものだと思います。

東電もJNESも、不確かさについて言及しています。 

そして、測れている実測値からもプラントや炉心の状況を推定しています。

 

 

各号機の炉心状態解析については、以下のページをご覧ください。

 

1号機の炉心状態解析

 

2号機の炉心状態解析

 

3号機の炉心状態解析

 

 

 

東京電力は、

2011/05/15 

「東京電力 福島第一原子力発電所1号機の炉心の状態について」という資料を公開

さらに

2011/05/23

保安院からの指示に対する報告として、

「東北地方太平洋沖地震発生当時の福島第一原子力発電所運転記録及び事故記録の分析と影響評価について」

を提出。

その中で、1,2,3号機の解析について、より詳細な情報を公開しています。

 

 

原子力安全・保安院は、、

独立行政法人原子力安全基盤機構「JNES」の協力を得て(ほとんどお任せ?)、東京電力が行った解析のクロスチェック行っています。

(東電が想定した事故シナリオを、MELCORで再検証 + 仮定を変えたシナリオも検証)

2011/06/06 

「東京電力株式会社福島第一原子力発電所の事故に係る1号機、 2号機及び3号機の炉心の状態に関する評価について」

を公表

 

 

さらに

原子力災害対策本部は、6月に

「原子力安全に関するIAEA閣僚会議に対する 日本国政府の報告書 −東京電力福島原子力発電所の事故について−」

で、東京電力と原子力安全・保安院(独立行政法人原子力安全基盤機構「JNES」)の解析を、流用(?)して事故状況につて暫定的な説明をしています。