(注記)

 

このページに掲載される各情報は、各ページ作成時に公表されている資料をもとにしています。

 

資料に関しては、すべての情報が利用可能な状況ではありません。

たとえば、東京電力並びに政府は、事故発生時から2011/03/12午前3時ごろまでのプラントに関するパラメーターをほとんど公開していません。 (2011/05/11現在)

もちろんこれには、技術的な理由もあるのですが、その他にも、誰にもわかっていない、見えていないこと等もまだまだたくさんあります。

 

2011/05/16 東京電力は訂正版のパラメーターを公開、さらに膨大なプラントデーターを公開しました。

 

 

また、作成者の知識並びに調査能力、理解力の限界があります。(この底は相当浅いものです。)

 

したがって、事故の要因、程度等については、未確定です。

正確な事故の要因、事故の拡大進行の過程、程度や影響等の確定には、法的な権限を持った正式な組織(事故調査員会等)の調査や捜査を待たなければなりませんし、相当の時間がかかるものと思います。

 

事故調査委員会には、事故の技術的な側面だけでなく、事故対応における、総理および政府並びに関与した政治家、専門家、各関連機関の果たした役割(プラス、マイナス両面)についても調査検証をしていただきたいと思います。

 

 

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緊急時被ばく IAEAとICRP(em)

 

国内法と規制
(dl)

国内食品の暫定基準(df)

 
国際機関による
基準や勧告
(il) 
食品・飲料についてのCODEX基準(co)

緊急時被ばくIAEAとICRP(em)

事故後の現存被ばくICRP(pr)

 

 

 

Personal Interests Research and Data Storage

2011/07/31

 

 

緊急時における被ばく線量に関するもの

 

緊急時の被ばく線量について、

作業員の上限値が250mSvに引き上げられたことや、

公衆の被ばく管理目標値などについて、いろいろと言われました。

 

以下に、国際的な基準として参考になるものを、いくつかを記しておきます。

(付記した、多くの日本語訳は、作成者が勝手にザックリ感丸出しでしたものですので、ご参考までにとどめてください)

 

 

緊急時被ばく IAEA と ICRP

1) IAEAのSAFETY STANDARDSのひとつ

 

INTERNATIONAL ATOMIC ENERGY AGENCY (IAEA)が、出している(May 2011)

SAFETY STANDARDS SERIES No. GSG-2

”CRITERIA FOR USE IN PREPAREDNESS AND RESPONSE FOR A NUCLEAR OR RADIOLOGICAL EMERGENCY”

には、

緊急時に事態に対応する人々が受ける線量制限についてのガイダンスがのっています。

 

ここで対象になる人々は、

”Emergency workers may include those employed by registrants and licensees as well as personnel from response organizations, such as police officers, firefighters, medical personnel, and drivers and crews of evacuation vehicles.”

です。

 

ガイダンスレベル(抜粋)

 

ガイダンスレベル

mSv 

(外部被ばくのみ*)

Life saving actions

人命救助の活動

<500

ただし、以下の場合、超過も認められる。

This value may be exceeded under
circumstances in which the expected benefits
to others clearly outweigh the emergency
worker’s own health risks, and the emergency
worker volunteers to take the action and
understands and accepts this health risk

 

Actions to prevent severe deterministic effects and actions to prevent the development of catastrophic conditions that could significantly affect people and the environment

重度な確定的な影響を避けるため、並びに、人々と環境に重大な影響を与える、カタストロフィックな事態の進展を防ぐための行動

 

<500

 

*内部被ばくに関しては、可能なすべての防護手段により、最小限にすべきとしています。

 

その他にも、働く人々がリスクを理解し自発的に受け入れていること、女性に関しては妊娠に気付いている場合は、緊急時業務から外れるべき事なども記されています。

 

 

また、公衆に関して、

確率的な影響のリスクを減じるための保護措置や対応措置についても基準を示しています。

 

クライテリア(抜粋)

 

対応措置の例

予想線量が以下の値を超える場合、

直ちに

100 mSv in the first 7 days

Sheltering; evacuation; decontamination; restriction of consumption of food, milk and water; contamination control; public reassurance

予想線量が以下の値を超えた場合、

対応の初期段階で

100 mSv per annum

Temporary relocation; decontamination; replacement of food, milk and water; public reassurance

受けた線量が以下の値を超えた場合、

長期的な医学的な対応

100 mSv in a month

Screening based on equivalent doses to specific radiosensitive organs (as a basis for medical follow-up); counselling

 

 

こちらは内部、外部被ばく関係なく全ての経路での被ばく(実効線量)です。

 

 

 

 

2)ICRPの勧告 Publication 96

 

the International Commission on Radiological Protection (ICRP)の、2005年 Volume35 No.1

”Protecting People against Radiation Exposure in the Event of a Radiological Attack”

こちらは、日本アイソトープ協会が、

「ICRP Publication 96 放射線攻撃時の被ばくに対する公衆の防護」として、

翻訳の確定版を公表(有効期限2011年12月31日)しています。

 

 

職業に関する被ばくのガイダンス Guidance for occupational exposure

 

 

Other operations, including recovery and restoration operations

Normal occupational dose limits apply,

通常の職業被ばく限度が適用される

通常の限度(実効線量)

100mSv 5年間(平均20mSv/year)

ただし、個別の1年で50mSvを超えない

 

 

Rescue operations

 

Saving life, preventing serious injury, or actions to prevent the development of catastrophic conditions

In principle, for life-saving operations, no dose restrictions are recommended if, and ONLY IF, the benefit to others clearly outweighs the rescuer's own risk

利益がリスクを明らかに上回ることを条件に、制限値をもうけないことを推奨

Other immediate and urgent actions to prevent injuries or large doses to many people

All reasonable efforts should be made to keep doses below twice the maximum single year limits (see below)

全の合理的な努力により、通常時の2倍(100mSv)以下に抑えるべき。

(Rescue operations)

Under conditions that may lead to doses above normal occupational exposure limits, workers should be volunteers and should be instructed in dealing with radiation hazards to allow them to make informed decisions. Female workers who may be pregnant or nursing should not participate in such operations.

(十分な理解と自発的な意思などの要件と、妊婦または乳児を持つ女性はダメよの注記)

 

 

 

 

 

公衆の被ばくに関して

対応策と、その実行により回避すべき線量の推奨値

(対策を実施する場合、それに見合った効果が必要なので、

以下のような被ばくを回避できるのであれば行うべきという判断基準の指標)

Recommended avertable doses for undertaking countermeasures

 

Countermeasure 対応策

Avertable dose 

対策により回避できるであろう線量

Sheltering 屋内退避

10mSv in 2 days (of effective dose)

Temporary evacuation 一時的な避難

50mSv in 1 week (of effective dose)

Relocation 移転

1000mSv or 100 mSv first year (of effective dose)

 

 

 

これらは絶対的な値ではなく、意思決定に際しての参考値であることが示されています。

 

根本には、

”Justification” 正当化という問題があります。

「The Commission recommends that any proposed intervention should do more good than harm, i.e. the reduction in detriment resulting from the reduction in dose should be sufficient to justify the harm and the costs, including social costs, of the intervention.」

社会的なコストなども含めたコストを、介入措置(対策)で得られものが超える必要があるでしょうという事です。

ただやみくもに線量を下げる為ならば、何でもいいというものではないですよ・・・・

という事です。

 

 

この辺がどうも一部の人達には、まったく理解されないようです。

おそらくは、放射線の影響(特に確率的なな影響)についての捉えかたに違い(説明不足や誤解、心理的な恐怖など(論理の外側)に起因するもの?)があるせいかとも思いますが…

極端な方は、放射線をゼロにしろとか・・・地球上というかこの宇宙に住めないよねーみたいな

 

 

Publication 96 には、

放射線に関する健康への影響に関する情報も豊富なので、それらに関しては、

放射線 放射性物質 放射能 (ra)

外部被ばくによる障害と治療(os)

内部被ばくの治療(is)

を参考にしてみてください。

 

 

 

 

3)ICRPの勧告 Publication 109

 

2009年 Volume39 No.1

”Application of the Commission's Recommendations for the Protection of People in Emergency Exposure Situations”

こちらも、日本アイソトープ協会が、

「緊急時被ばく状況における人々に対する防護のための委員会勧告の適用(仮題)」として、

仮訳の日本語版ドラフトを公表しています。

(日本語的にこなれていないかなと・・・・、 

英語が出来る人は、原文読んだほうが(もしくは、両方比較しながら読んだほうが)いいかもしれません。)

 

 

ICRP 109は、

”This advice relates to preparedness for, and response to, all radiation emergency exposure situations”

全ての緊急時被ばく状況にに対する、準備と対応についてのもです。

 

このなかで、緊急時被ばく状況のレファレンスレベル(residual dose 残存線量)として、20〜100mSvの間に設定することを推奨。

”In the context of developing response plans for emergency exposure situations, the Commission recommends that national authorities should set reference levels between 20 mSv and 100 mSv effective dose (acute or per year, as applicable to the emergency exposure situation under consideration).”

 

作業員の被ばく限度については、上記の2005 Publication 96をそのまま適用

 

 

また、緊急時の対応の目的を8つあげています。

 

Goal 1: to regain control of the situation;

(事態のコントロールを取り戻す)

 

Goal 2: to prevent or mitigate consequences at the scene;

(現場での(悪い)結果を避ける、または、和らげる)

 

Goal 3: to prevent the occurrence of deterministic health effects in workers and the public;

(作業者と一般の人について、確定的な健康に関する影響の発生を避ける)

 

Goal 4: to render first aid and manage the treatment of radiation injuries;

(救急治療の提供と、放射線傷害の治療をマネージする)

 

Goal 5: to reduce, to the extent practicable, the occurrence of stochastic health effects in the population;

(現実的な範囲で、人々への確率的な健康影響の発生を軽減する)

 

Goal 6: to prevent, to the extent practicable, the occurrence of adverse nonradiological effects on individuals and among the population;

(現実的な範囲で、個人または人々への放射線以外による負の影響の発生を軽減する)

 

Goal 7: to protect, to the extent practicable, the environment and property;

(現実的な範囲で、環境と所有物を保護する)

 

Goal 8: to take into account, to the extent practicable, the need for resumption of normal social and economic activity.

(現実的な範囲で、通常の社会的、経済的活動を取り戻す必要を考慮にいれる)

 

 

さらに、過去の経験からのレッスンとして以下の事をあげています。

 

1.”Non-experts (the public) and decision makers in different fields implement protective and other actions.” 

(エキスパートじゃない人たちが、保護措置などを実行する)

 

2.”The public and decision makers want to know that they and their loved ones are safe. A rationale based solely on cost benefit and averted dose is not helpful in addressing this concern.”

(人々は、自らや親しい人々の安全について知りたいと思い、コストとベネフィットや、回避された線量だけに基づいた正当化は、これらの心配に答えるのに有効ではない。)

 

3.”Criteria consistent with established radiation protection principles cannot be developed effectively solely during or after an emergency because communication of those criteria can become more difficult. ”

(緊急時の間、または事後において、放射線防護の原則に基づく基準を効果的に作ることは出来ない、なぜなら、緊急時又は事後では、それらの基準についてのコミュニケーションがさらに難しくなるため)

 

4.”Non-radiological (e.g. economic, social, and psychological) consequences may become more important than the radiological consequences due to a lack of pre-established guidance that is understandable to the public and officials, and because of the nature of actual prevailing circumstances.”

(事前に準備しておくべき、人々やオフィシャルの人にわかりやすいガイダンスの欠落によって、放射線ではない(経済的、社会的、心理的)影響が、より重要な問題となる事がある。)

 

これらは、多くの人に思い当たる節がありますよね、

そして行政サイドには耳が痛い話ではないでしょか、

準備不足、過去に学んでいないというそしりは免れないような…

ICRPの109と111は、今回の事態における対応に関する評価の指針にもなると思います。

 

 

ICRP 109では、

Projected dose(予測線量)、  

"dose expected to be received in the absence of the planned protective measures."

 

Residual dose(残存線量)、

"projected dose minus the averted dose; dose expected to be received or measured/assessed following implementation of the planned protection strategy." 

 

Averted dose(回避線量)

"dose expected to be avoided through implementation of the planned protective actions. In general, averted dose refers to the implementation of individual protective actions, but may, if specified, refer to the dose avoided from the implementation of several protective actions."

 

が紹介されています。

 

それぞれの関係は

Residual dose(残存線量) = Projected dose(予測線量) − Averted dose(回避線量)

みたいな感じです。

これらは、

”It is necessary to define a conceptual set of doses for use in the justification and optimisation of emergency plans and decisions.”

緊急時のプランや意思決定の”正当化”と”最適化”のために必要とされています。

 

この ”justification”(正当化)と ”optimisation”(最適化)は重要な原則です。

長くなったので、詳しくは

事故後の現存被ばくICRP(pr)

で記載することにします。

 

 

ICRP 109では、

対策のプランニングから、実施とチューニング、防護措置の終了まで触れられいます。

 

一度ぐらいは、流し読みしてみる価値はあると思います。